社内の実験と工場での試験を繰り返し、現場にマッチするAIを開発
製造業において、不良品を検知して取り除く工程は、品質を管理するうえで欠かすことができない。そのための手法としていまも広く実施されているのが、人の目による検査、すなわち「目視」だ。
しかし目視には、業務を習熟するのに時間がかかる、人の力に依存するため見逃しのリスクをゼロにはできないといった課題がある。さらに労働人口が減少しているいま、目視を担える人材の確保が難しくなっているという現実も。これらの課題に対応すべく、センサをはじめとした検査機器の活用が行われているが、これにも問題があった。
食品や繊維のように製品の色・形状が多種多様で、良品と不良品の線引きが曖昧な分野では力を発揮しにくいのだ。近年はその課題を解決すべくAIの活用が進められているが、導入コストが高額で、製造業の大部分を占める中小企業には手が届きにくかった。
これらの課題を解決するのが、株式会社フツパーが提供する製造業向け画像認識エッジAIサービスだ。同社は、「はやい、やすい、巧いAIを」というスローガンを掲げ、カギとなるエッジAIという仕組みにより、中小企業も導入しやすい低価格化を実現した。また、徹底的に中小製造業の現場に入り込んで技術開発をすることで、研究室レベルではなく「現場で本当に使えるAI」を開発した。
同社において、AIエンジニアとして開発を担当しているのが出原祥希氏だ。2021年春に大学を卒業、プログラミングも学生時代に独学で学び始めたというフレッシュなキャリアながら、最前線の開発現場で活躍している。
「AIの導入を検討している工場へ出向き、製造現場の状況や製品などを自分の目で確認しながら話を伺います。そのうえで、現場に即したAIを構築していく業務に携わっています。導入前には社内で実験を行い、OKとなったうえ工場で試験導入をするのですが、なかなかすぐには思い通りの結果を出してくれません。問題点を抽出し、システムに改良を加えて再び工場で試験をするという繰り返しです」
工場は、光の当たり方や振動など条件が刻々と変化する。さまざまな環境に対応できるシステムを作り上げるのが、この仕事の難しさでもあり面白さだと出原氏は話す。
インターンシップから正社員となり、スタートアップの一員に
大学で経済学を学んでいた出原氏は、在学中に東南アジアで一人旅を経験。帰国後は周囲の学生と同じように就職活動を行い、金融業界への内定を得ていた。しかし「この仕事を5年後にしている自分の姿が想像できない」という思いから、内定を辞退。同じ頃からプログラミングを学び始め、2021年の卒業後、インターン生としてWEB系ベンチャー企業で法人のDX推進業務に従事した。
この会社の社長がフツパーのCEOである大西氏と知り合いだったこともあり、フツパーを紹介してもらったのが同年6月のことだった。
「最初はインターン生として参加しましたが、既に大学は卒業していたので、フルタイムで入ることになりました。印象的だったのは、最初に挨拶に行った日に社長から『いつから来れる?』と聞かれ『明日からでも大丈夫です』と答えると、本当に翌日からの勤務が決まったことです。フットワークが軽くておもしろそうな会社だと思いました」
「現場で実務を学ぶ」インターンシップではあるが、同社の場合「教えてもらう」というよりは「自ら学びにいく」という姿勢が重視されたと出原氏は振り返る。
「わからないことを教えてもらおうとしても『それはあの資料に書いてあるから、読んだらわかるよ』といわれます。逆に『ここがわからなくて資料で調べたのですが、まだわからない部分があるんです』と、自分でアクションをしたうえで相談に行くと、丁寧に説明してくれます」
出原氏は、この環境でプログラミングの知識や技術を磨き「この会社でもっと成長したい」という思いをより強くした。COOの黒瀬氏からも背中を押され、インターン生として参加したわずか2か月後の8月に正社員となり、名実ともにフツパーの一員となった。
多様な業務に挑戦し、自身の可能性を広げることができる
「現場で使えるAI」を実現するため、出原氏は頻繁に顧客企業の工場へ足を運んでいる。そのうえで何度も改良を施すことでシステムが性能を上げ、いいサービスだと顧客が喜んでくれることが大きなやりがいになっている。
一方で社内の成長できる環境についてもこう語る。
「まだまだ少人数でお互いの顔がしっかり見える間柄ですし『現場で使えるAIを作るんだ』という熱い思いを共有しているメンバーばかりです。そういった環境だからこそ、会議には全員が参加し、みんなが納得するまで話し合うことができる。会社のためになりそうなことなら、私のような社歴の浅いメンバーの提案であっても決して否定せずやってみようと背中を押してくれます」
出原氏はいま、AIエンジニアとしての業務以外に、同社サービスのPRを行うWEBサイト作成の業務も担当している。
創業メンバーである黒瀬氏からは、営業職にチャレンジすることも勧められている。専門性の異なる業務を経験することができ、その中から適正を伸ばしていけるのもスタートアップならではだ。
「確かに、スタートアップは先行きが不透明だったり、オンとオフの切り分けが難しいという側面はあります。でもそれは、頑張り次第でいくらでも自分の可能性を広げられることであり、情熱を注ぎ込めるという意味でもあります。どちらと捉えるかは人それぞれですが、後者であれば、スタートアップは素晴らしい環境です」
出原氏は「やりたい仕事がはっきりと定まっていない人には、むしろスタートアップはいい環境なのかもしれない」と指摘する。一つの業務だけにかかりきりではなく、同時にいろんな業務に関わることができる。やりたいことが見つかったとき、その経験は絶対に無駄ではないからだ。
出原氏自身も、以前は考えたこともなかった営業職に興味が生まれ、将来はプロジェクト全体を統括する仕事に挑戦したいと考えるようになった。タスク管理や、社会人としてのしっかりとした基礎知識・マナーを身に付けたいと自身のなかの課題にも目を向け、自己の成長に関しても具体的な目標を掲げている。
最後に、「周囲からは『熱さが見えない』と言われてきたが、最近は『熱くなってきた』と言われるようになった」と語る出原氏。理由を問うと「自分もこのメンバーの一員として会社を成長させたいという気持ちが今の熱さに繋がっているのかな」とはにかんだ笑顔を見せた。
取締役 COO黒瀬氏と
スタートアップへのイメージ
<Before>
- ●キラキラしている
- ●ずっとパソコンで仕事をしている
<After>
- ●現場での仕事が多い
- ●どんな仕事にもチャレンジできる
自社のイイトコロ
創業メンバーもその後に参画したメンバーも分け隔てなく、みんなで和気あいあいとした雰囲気の中で仕事ができます。それでいて、サービスや技術、会社のあり方などについて話し合うときは、率直な意見がどんどん出てきます。単に仲がいいだけではなく「いいものにするために厳しいことも言う」「いいものにしたいから、違う意見もしっかりと受け止める」というメリハリがあるところが魅力です。
スタートアップで働こうと考えている人へ
メンバーの人柄や仕事への思いが反映されやすいのがスタートアップです。社風が合う・合わないの差は、普通の企業以上に現れやすいかもしません。そこで、興味ある企業には事前に会社訪問をさせてもらうことをお勧めします。社内の様子を見学したり、実際に社員に話を聞かせてもらうと、自分との相性を考えやすいと思います。「インターンシップをすることで、自分はどうなりたいのか」という目標を設定して、その目標から逆算して必要なものを得られる環境が、あなたにとってのぴったりなインターンシップ先だと思います。